2012年4月21日土曜日

椎間板造影


椎間板造影

 はくざん 通信   第30号 2003.7.15   ホーム  はくざん通信の目次に戻る 



椎間板造影(discography)

 椎間板とは?

 椎間板は、脊椎骨と脊椎骨の間にある一種の軟骨で、背骨が自在に動くように働きます。椎間板は車のタイヤに喩(たと)えられることもあり、中央部には髄核と呼ばれる圧の高い部分(ショックや重量を吸収する圧縮空気相当部)があり、周辺は線維輪と呼ばれるタイヤのゴムに相当するような構造になっています。
 タイヤもパンクすることがあるように、圧迫の繰り返しによって、髄核の高い圧により椎間板の線維輪が断裂し、椎間板ヘルニアを生じます。このヘルニア部が脊髄や神経を圧迫すると、痛みやしびれ、筋力低下などの症状を来たします。

 椎間板ヘルニアの図


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椎間板造影

 椎間板造影は、椎間板障害が疑われた時に行われる検査法です。MRI が一般化した今日でも、手術を行う前の術前評価や手術計画を建てる上で省略できない場合が多い検査です。
 造影剤を椎間板の内部に注入して撮影します。造影剤の流れ、貯留部位、造影像の形態などから、椎間板の変性、損傷の程度、ヘルニアの大きさ、存在部位、後縦靭帯や神経との関係などを推定します。
 造影剤注入時、椎間板内圧が上昇し、疼痛の誘発を見るという機能的な検査の意義もあります。
椎間板の変性が強い場合には、内圧の上昇は殆どないため痛みを感じないこともあります。
 造影検査後にCT による断層像を撮影し、より精密に検討します。

   

椎間板造影検査(ディスコグラフィー)

 正常であれば椎間板内に造影剤が丸くとどまって観察されるが、損傷があるとヘルニアに沿って周囲に漏れ出る。
 ヘルニアは上図のように後側法(左図)に出て神経根を圧迫したり、後方(右図)に出て脊髄や馬尾神経を圧迫することが多い。


 椎間板造影の実施法

検査法の1 例を示します。
 造影剤過敏症の既往がないか問診やチェックをします。ほかの造影が済んでいる時は省きます。


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1. 実際の造影検査の手技は、X 線透視検査台というX 線による撮影と透視( 人体を透かして見れる) ができる検査台の上で行います(下図)。

2. 頚椎椎間板造影は仰臥位(あおむき)で行います。腰椎椎間板造影では側臥位(横向き)あるいは半腹臥位(はらばい)にて行います。腰の下に枕を入れることがあります。

3. 皮膚を消毒し、局所麻酔を行います。皮膚に麻酔薬が入るとき多少痛みがあります。局所麻酔の後、椎間板造影用の針( ブロック針といいます) を使います。

4. X 線透視で確認しながら針先を椎間板の中央部へゆっくりと進めます。

5.椎間板内に針先を留置できたら造影剤を注入します。注入時の抵抗、造影剤の流れる部位、痛みの再現性などを観察します。いつもと同じ痛みを感じれば、針先がある椎間板は痛みを引き起こしている責任病巣だと考えられます(痛みがあまりないこともあります)。

 X 線透視検査台

この検査で重要なポイントは、薬液(造影剤)を注入して圧を加えた時の感覚です。以下の項目に注意しましょう。注入時に・・・

 1.何も感じない
 2.圧を感じるが痛くない
 3.痛い

痛みを感じた時には以下の2つを区別しましょう。
 ●いつもの痛み
 ●痛いけど、いつもの痛み(部位)ではない。


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考えられる危険性や合併症の問題について

 針を入れて行う検査ですので、侵襲的な検査になります。侵襲的な検査には避けられない、共通する問題
点があります。

 ●一般的には、感染が心配な点です。通常は清潔な操作で、滅菌した材料を使用しますので問題になることはありません。検査後は念のため抗生物質を内服していただいております。

 ●椎間板の側面には神経根が走っています。神経根に針先が接すると、刺激を受けるため痛みを感じることがあります。神経根を触ったときには痛みがでますが、神経根の障害を残すことはまれです。

 ●針先が硬膜を刺すと、髄液圧の低下を来たすことにより「ミエロ後の頭痛(第12 号参照)」と同様の機序で頭痛を生じることがあります。L5/S1 の椎間板造影は時に困難で、体の中央部(正中)からまっすぐ針を進め、硬膜を貫いて造影していた時代がありました。このような手技では頭痛の頻度は高かったのですが、現在は側背部や斜位から針を進めますので、頭痛を生じる可能性はほとんどありません。

 上記の問題点は、経験豊かな医師が現代医学の最新の技術で検査を担当しておりますので、通常問題になることはありません。



 (参考)腰部の椎間板造影の手技は「経皮的髄核摘出術」の手術方法と基本的な部分は同じです。

 「経皮的髄核摘出術」とは背中に小さな孔(数ミリ程度)を開けるだけで、細いパイプを椎間板内にさし入れ、その先から鉗子やカッターで髄核を掻き出し、椎間板の内圧を下げることによりヘルニアをへこませる方法です。入院期間は1週間ほどです。但しこの適応対象とできるヘルニアの患者さんは、そんなに多くはありませんし、通常の手術に比べると効果も不十分になりがちです。

 経皮的レーザー椎間板減圧術を行っている施設もありますが、レーザー法は健康保険が適用されませんので全額自費になります(当院ではレーザー法は行っていません)。


椎間板造影検査 (ディスコグラフィー)
 


参考サイト:
たはら整形外科:
腰椎椎間板ヘルニア(本田整形外科クリニック)

Dr. 赤ひげ.com:
腰痛の診断、椎間板造影(英文です)

参考教科書:
整形外科の検査、診断法 メジカルビュー社 山本吉藏 編
標準整形外科学 医学書院 石井清一監修
   (編集:医局 野上俊光ほか)


COPYRIGHT naruoseikei成尾整形外科病院  ホーム  はくざん通信の目次に戻る 



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