大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科
◎専攻名: 小児発達学専攻
講座名(設置大学): こころの発達神経科学講座(大阪大学)
研究領域名: 小児発達神経学
子どものこころの発達は、先天的に組み込まれたプログラムの基盤にたって、個々の遺伝的素因や、養育者との愛着形成、社会経済的な環境や疾病等による後天的な要因が、複雑に相互作用することにより規定される。例えば、極小未熟児生存児に注意欠如/多動性障害 (ADHD) や学習障害の発生が高いことや、重度の愛情剥奪体験がある子どもでは発達障害類似の症状を示すことが知られている。従って、こころの問題だけを子どもの身体や環境から切り離して考えることはできない。さらに発達障害と診断された場合にも、攻撃性が強い子ども、理解はしているが無言語の子ども、多動が著しく目立つ子ども等々一人一人の特色は異なる。
我々の領域では、臨床を重視しながら神経科学的な観点から、①個々の子どものこころの発達とその障碍について脳画像や認知機能検査等を用いて脳科学的な視点から理解すること、②後天的な環境要因がどのように子どもの発達に影響を及ぼすかを、特に、睡眠との関連に重点をおいて調べることを目指す。また、近年神経炎症が発達障害の発生要因になっているデータが蓄積されてきており、ヒト脳画像と脳組織を用いた神経炎症仮説の検証、並びに、マウスを用いて、組織学的、分子生物学的な手法により、神経炎症がシナプス形成に与える影響の解析を行う。
研究領域名: 子育て支援学
子育てにおける支援は、子どもの特性のみならず、養育者の特性を理解した上で、子どもが生活する環境を視野に入れた働きかけを行うことが重要といえる。近年における子どもの虐待や事件・事故などの報道からもわかるように、地域における安全が崩壊し、核家族化や少子化などから子どもが生きやすい環境とはいいがたい。子どもにアプローチするだけでなく、子どもを取り巻く養育者や他者へのアプローチの方法も見直すことが急務といえる。例えば、発達障害児の持つ特性から、養育者が子育てに困難さを感じやすいことも知られており、育児不安や子ども虐待に結びつきやすいことも指摘されている。
そこで、子育て支援学領域では、①子どもと養育者の特性への理解を深めた上で、臨床心理学的面接に適用していくための技法の習得、②子どもと子どもを取り巻く他者との関係性に焦点をあて、発達障害児の対人関係の獲得過程を科学的に検討し、包括的な支援を提供できる視点の習得を目指す。
近年の遺伝学的研究により、他の基質的疾患と同様、精神疾患においても発症リスクにかかわる脆弱性因子が多数報告されるようになってきた。
本研究領域では、広汎性発達障害、 児童期統合失調症、 児童期気分障害などの主要な児童思春期の精神疾患脆弱性遺伝子を中心に、これら脆弱性因子が脳と心の発達に及ぼす影響を解剖学的、生化学的、分子生物学的な手法を用いて検討を進め、 広汎性発達障害、児童思春期の精神疾患発症メカニズムを分子レベルで解明することを目的としている。これら研究を通じて脳と心の発達を科学的基盤に基づいて理解し、発達障害を初めとする子どものこころのひずみに対する予防と対策の確立を目指す。
研究領域名: 高次脳機能損傷学
発泡性はどのように作成されます。
近年、交通事故や転落事故等による頭部外傷後に、病変は治癒しているにもかかわらず、注意障害、記憶障害、行動、情緒の障害など、発達障害や精神疾患様の症状を呈する高次脳機能損傷を持つ子ども達の存在が注目されている。 しかしながら、これら症状が起きるメカニズムや対処方法(診断・治療・支援等)が確立しておらず、その対策が急がれている。高次脳機能損傷は、頭部外傷の他、脳梗塞、くも膜下出血、低酸素等の脳虚血、脳炎でも起こるとされることから、本研究領域では、これら様々な原因からどのようなメカニズムで、発達障害や精神疾患様症状に結びついていくのか、分子レベルでの解明と、一方で、得られた結果を基礎とした診断法の確立、科学的基盤に立った支援方法の確立を目指す。
子どものこころのひずみの原因の根底には子どもの栄養状態・食事環境の問題、引いては親の食意識・適切な知識の不足といった社会問題がある。また、自閉症の子どもには肥満が多いという報告など、近年子どものこころと身体のバランスの問題がクローズアップされている。これに対して、現在社会の生活習慣病対策としての特定健診などの予防医学の推進に加え、子どもの発育発達への影響も視野に入れた親への"食育"及び適切な生活習慣病対策は極めて重要であると考えられる。
本寄附講座では、このような状況を踏まえて栄養学・代謝学の視点から小児の精神疾患において発症リスクにかかわる脆弱性因子を明らかにし、生活習慣病の早期予防対策として親子への"食育"の啓発、胎児期・幼少期の脂質・糖代謝の解析を行い、子どもの健常な発育発達に役立つ研究成果を挙げることで健康発達の実践を目指す。
研究領域名: 社会認知生物学
現代社会が抱える深刻な問題である、「子どもの学習、社会性、行動の障害」を心が宿る脳の機能障害ととらえて、そのメカニズムを解明するのみならず、「脳を育み機能障害を克服する方策・治療法」を提案するための教育研究を行う。研究成果をあげるための具体的な戦術として、ここ数年の生物学上の大発見である、低分子RNA技術(RNAi)によるショウジョウバエの発達・学習・記憶関連遺伝子の包括的探索を行う。その中から人と相同関係にある遺伝子を選択し、選択した遺伝子の脳内発見をヒトの死後脳で調べ、異常発現している遺伝子について、ヒトの血液サンプルでDNA解析を行う。このようにして、「子どもの学習、社会性、行動の障害」に関する遺伝子群や社会認識を記憶し愛着を向上させる分子を絞り込み、得られた情報� ��創薬へ活用していく。また、「子どもの学習、社会性、行動の障害」に関係する遺伝子群について、神経ネットワーク形成と可塑性の新分子機構に果たす役割を遺伝子改変技術並びに分子イメージング技術を用いて究明する。
研究領域名: コミュニケーション支援学
親子間、仲間間、教師―生徒間などのコミュニケーションは、心についての理解、世界についての概念的知識、文法や語彙のシステム、推論や記憶、感情の表出と受容など多様な能力を、総合的に活用することで成り立っている。また、それは言語を含むコミュニケーションのしかたそのもののみならず、社会文化的な慣習、出来事の社会的意味を理解し、確実な相互理解の手法と相互協調を学ぶことに決定的に関与している。発達障害のあるこどもたちは、コミュニケーションに関与する多様な要因の一部あるいは多数に障害があり、母子、家族、園や学校、地域などあらゆる場での社会的な学びに困難を示し、それがかれらの社会適応を脅かすのみならず、安定した人格形成をも妨げかねない。本領域は、そうしたコミュニケーショ� ��の障害の発現機構の解明と、子どもと大人あるいは子供同士のコミュニケーション不全への介入技法の開発をめざす。
研究領域名: 高次脳機能学
どのようにマスメディアは批判的な分析を利用しますか?
高次脳機能学研究領域では、MR(磁気共鳴)やMEG(脳磁図)などの機能的脳画像法を用い、こころの迅速な活動を映像化し、その背後のある分子生物学的現象を明らかにするための教育活動を行う。MRは医療分野ではごく一般的な検査機器である。MRは応用範囲が広く、機能的MRI(脳の活動を見る)、容量MRI(脳各部位の容積を計算する)、テンソル・イメージング(神経の走行を見る)などにより脳の機能や形態を詳細に知ることができる。一方、MEGは脳内に発生するわずかな磁場を捉える手法である。時間分解能と空間分解能に優れ、ある特定の高次脳機能に関係する脳部位を限局して同定することも可能である。ただ、脳深部の検索には適さない。そこで、MRとMEGを組み合わせることにより、こころのひずみに関する詳細な脳内の情報を 得る。わが国のMRやMEGの研究者はこころのひずみに関する研究にほとんど関心を持っていないため、この方面に関するわが国の研究は海外に大きく遅れを取っている。今後重点的な充実が必要とされる分野である。さて、わが国の脳画像学研究領域の最大の欠点は、新たな脳画像解析手法を開発する人材がいないことである。わが国の脳画像に関する多くの技術と理論は外国に頼っている。脳画像と分子生物学を結びつけた新しい学問領域を創生するには、画像物理学を専門とする研究領域を作り専門家の育成を図らなければならない。高次脳機能学研究領域は、画像生物学研究領域(浜松医科大学/中京大学)と共にこの人材育成の課題に取り組む。
研究領域名: 協調運動障害学
自閉症を含む発達障害を抱える人たちは運動機能の障害を示す場合が多々有る。幼少期においては原始反射の退消のおくれや長じては協調運動のスムーズさの減弱などが知られている。そこで、運動機能の大脳、脳幹や脊椎の生理学について学ぶ。新生児から幼少時までの反射運動との発達に応じた変化を学ぶ。さらに、大脳の連合や左右脳の違い、大脳半球間連携など、協調運動障害研究に必要な基礎知識を身に付ける。
研究領域名: 社会神経科学
人同士の相互作用と社会的意思決定のプロセスを、ニューロイメージング技術等を用いた神経科学と、哲学・心理学・社会学など人文社会科学の両方の観点から統合的に解明する、革新的な研究に挑戦しうる人材を育成する。そこでは、自閉症を代表とする発達障害を生み出す生物学的要因と社会的要因との関連、自閉症脳と非自閉症脳のインタラクション、脳機能の個人差を媒介とする発達障害と社会とのかかわり、人間の社会的行動における合理性-非合理性問題、社会経済行動と脳の関連、薬物の脳内作用のこれらに対する影響、および脳機能のエンハンスメントと社会の関連などの解明に取り組む。これらの成熟した脳(大人)と成長途上の脳(子ども)とでの違いもあわせて追究する。したがって本領域の研究は、金沢校の社� ��認知生物学研究領域、コミュニケーション支援学研究領域、高次脳機能学研究領域との密接な連携のもとに行うこととなる。
研究領域名: 画像生物学
担当教員名: (選考中)
PET(陽電子放出型断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像法)や近赤外光トポグラフィなどの分子イメージング法は生体情報を非侵襲的かつ客観的に描出できる優れた特性を持ち、さまざまな病態の診断や治療効果判定の手段として広く普及している。画像生物学では、これらの生体イメージング手法の対象となる脳や生体の機能について学ぶとともに、イメージングにより得られるデータの処理法や解釈の仕方を身につけ、小児の発達における分子イメージング手法の優位性を学習する。
研究領域名: 社会支援学
子供たちは遊び場を良くする方法の表示
障害児・障害者が健常者と均等に生活できるためには、彼らの持つ障害の特性を理解し、個々の発達段階に応じた適切な支援を行うことが不可欠である。社会支援学では、子どもから成人にいたる発達過程の理解に基づいた支援、障害児・障害者のおかれた環境に応じた支援、および、支援する側への支援、という多角的な観点からの支援方策を学ぶ。さらに、医学的診断を含めた個々の子どもの査定方法、査定された障害を持つ子どもに対する個別支援プログラム作成の仕方、実施方法、効果評価法について学習する。
研究領域名: 疫学統計学
ヒトの発達や行動を研究対象とする場合、発達や行動のどの側面に注目するか、それをどのように客観的に測量するか、対象をいかに的確にサンプリングするか、得られた測定値からどんな科学的事実が演繹されるか、また、研究仮説が科学的に立証されたかなど、順次マクロからミクロに向かう視座を必要とする。疫学を学ぶことにより、この視座が容易に開かれる。疫学統計学では、科学的な考え方に基づいた研究デザイン、データ解釈の方法、統計学的解析法について学習する。
研究領域名: 触法行為関連学
担当教員名: (選考中)
子どもの犯罪、触法行為、非行は、近年増加の一途にある。また、発達障害を持つ者は犯罪や非行のリスクが高いと言われている。触法行為関連学では、子どもの反社会的行動のリスク要因は何か、子どもの犯罪がどのような状況で行われ、また、その犯罪が次の犯罪にどのような影響を与え、さらには、成人後の考えや行動にどのような影響を及ぼしているのかについて学習する。
研究領域名: 認知行動療法学
担当教員名: 中川彰子 教授
不安障害(パニック障害、強迫性障害、社交不安障害、心的外傷後ストレス障害など)、大うつ病性障害、摂食障害(神経性大食症)などの精神障害に対する認知行動療法の科学と実践を批判的に吟味することで、新しい観点からの認知行動療法の発展に貢献する臨床研究を行う。
研究領域名: メンタルヘルス支援学
担当教員名: 中里道子 准教授、松本有貴 講師、髙岡昂太 助教
児童思春期には、各発達段階において、それぞれ特徴的な心の発達課題が存在すると考えられている。不安や抑うつ、摂食障害などのメンタルヘルス(心の健康)の問題の発達課題に応じた特性を理解し、早期発見、早期介入の観点から、個々のこどもや集団に対する認知行動療法を含めて、どのような支援が多様な専門職によって現場で行うことができるかについての研究を行う。
研究領域名: 認知行動脳科学
不安障害(パニック障害、強迫性障害、社交不安障害、心的外傷後ストレス障害など)、大うつ病性障害、摂食障害(神経性大食症)などの精神障害における認知、行動、注意、感情などの高次脳機能の歪み(バイアス)に関して、非侵襲的脳機能検査や動物実験モデルを用いた基礎的研究を行う。
研究領域名: 情動認知発達学
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会性・コミュニケーション・想像力における障害を特徴とし、就学期には「いじめ」、青年期には「引きこもり」など社会的問題が起こることが知られ、早期診断・早期介入およびその病態メカニズムの解明は重要かつ急務な課題である。本領域では、ASDを対象に、非侵襲的画像検査および新しい非線形解析法を駆使して、脳構造/脳機能異常を詳細に検討し、認知神経心理学的指標(共感性・表情認知・視線計測など)・多様な生物学的マーカーとの関連性や脳内ネットワーク障害の病態メカニズムについて探求する。具体的な取り組みとしては、表情認知の際にASDはどのような脳賦活パターンの特徴を示すのか、他者への愛情や社会性を育むとされるオキシトシンがコミュニケーション時の機能的 MRIにどのように関連するのかなどが挙げられる。そして、個々のASD患者の実践的な治療・支援に向けてどう役立てられるかを検証する。
近年、子どもの食生活の偏り(過度な食事制限やインスタント食品偏重など)とこころの歪みとの関係がよく指摘され、亜鉛・鉄などの微量元素やn-3系不飽和脂肪酸の欠乏が、若者の「感情の切れやすさ」あるいは情動発達の障害やうつ病の原因として注目されている。また、胎生期から生後発達期に生じる微細な神経回路の形成障害が、気分障害や統合失調症などの精神疾患発症の脆弱性基盤に関係するという「神経発達障害仮説」が脚光を浴びている。それゆえ、本領域ではこれらの栄養素の欠乏やストレス負荷などの発達期うつ病動物モデルを作成し、脳代謝機能やシグナル伝達機構、神経可塑性、さらには情動発達の障害や微細な神経回路の形成障害などを中心に解析を進め、子どものうつ病の病態メカニズム解明に向けた新た� �展開を探求する。
研究領域名: 発達環境支援学
子どもたちのこころの健康の維持は、21世紀の最も大きな課題の一つとして注目されつつある。近年、 児童虐待や子どもの心身症、 発達障害など、 いわゆる"こころ"の問題解決への社会的要請が強まっている。児童精神科領域とされるこれらの問題は、実際には精神科や小児科の合間にあり、未解決の問題が山積している。 特に昨今、医療機関への受診が急増している発達障害に対しては、その実態と要因を探ることは急務である。
子どものこころの発達は、先天的・後天的な様々な要因が複雑に絡み合う中で規定されているが、その中で、我々は子どもの脳に関わる影響に注目している。ヒトの脳を可視化する技術が進歩し、非日常的または日常的な様々なトラウマ体験の生物学的影響が脳にもたらされることが解明されてきた。
"こころ"の問題解決を実現するために、脳機能イメージングや神経心理学的手法を駆使した、脳科学を基盤とする学際的な研究を推進する。発達障害の生物学的なリスク要因を早い段階で認識すれば、予防や治療へつながる可能性が高まる。脳が外界環境の強い刺激により影響を受けるという事実を前提に、臨床医・基礎研究者・地域が連携する中で研究を進め、教育・療育方法の新たな開発を進める。さらに、 環境が小児のこころの発達に及ぼす影響についても多面的な研究を展開し、難治とされる脳機能疾患の治療・予防を可能にするために取り組む。
研究領域名: 脳機能発達学
分子・細胞レベルでの解析を中心とし、脳の機能発達の仕組みを解き明かすことを目指した研究を展開する。分子や細胞レベルでの仕組みの解明が進むと、脳の働きを実体を伴って理解できるようになる。そのため、さまざまなこころの疾病を、その仕組みの破綻としてとらえることができ、疾病の新たな理解や、従来にない治療法の開発に結びつくことが期待される。本研究領域では、以下の研究のテーマで研究を遂行する。(1)脳微小変異の意義と疾患との関連に関する研究。「一見正常と組織学上区別が困難な程度の細胞配置異常 (脳微小変異) が存在し、その異常ゆえ機能変化が生じる」との仮説に基づき、発達障害や一部の精神疾患の真の病因を脳微小変異に求め、脳微小変異をもたらす遺伝子群を探索しモデル動物も利用し研究を展開する。(2)神経回路網の発達・成熟の解析とその仕組みに関する研究。(3)心理・行動科学領域における生体リズム研究。子どものこころの発達におけるひずみと、睡眠や食事時間などの生体リズム障害・体内時計異常との関連性についての研究を進める。(4)シナプスにおける情報伝達の発達に関する研究。神経伝達物質と受容体の発達に伴う変化や意義、そのやり取りを担う構造(シナプスやスパインなど)の発達について研究を進める。
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